新型コロナウイルスからイベント市場はどれくらい回復したのか?
新型コロナウイルスが「5類」に移行することになりました。「5類」とは感染法上の分類で、新型コロナウイルスは、今までは「2類相当」という「2類」の結核などより厳しい感染対策を行うことができる位置づけでしたが、5月8日より季節性インフルエンザなどと同じ「5類」に移行されます。それによりマスクに関しても、3月13日からは医療機関受診時や通勤ラッシュ時といった混雑が予想される場所は引き続き着用を推奨するものの、他の場所に関しては、個人の判断に委ねられることとなりました。このように、世界で猛威を振るった新型コロナウイルスは段々と収束し、我々の生活に日常が戻りつつあります。
ではイベント業界は、どれほど感染拡大前まで戻っているのでしょうか。この記事では「スポーツ」、「ライブ・エンターテイメント」、「大衆向けイベント」の3つに分けて現状をご紹介します。
まずスポーツ業界は、感染拡大前のスタジアムの状態に戻りつつあります。2020年の感染拡大時は、まず公式戦の延期から始まり、無観客での開催で再開し、有観客になった後も観客数の上限が設定され、5,000人→スタジアムの最大収容人数の50%とかなりの制限を受けて来ました。しかし2022年からはその上限が撤廃され、スタジアムにはMAXの観客を入れることができるようになり、サッカーJリーグがHP上で公開している観客動員数によると、2020年以降のJ1の合計観客数は、1,773,481人→2,531,007人→4,384,401人と、2019年の6,349,681人には及びませんが、順調に回復曲線を辿っています。
また、今年からはスポーツの応援に欠かすことのできない声出しによる応援も解禁され、ファンの観戦意欲も高まることで更なる回復が見込めるのではないでしょうか。Jリーグに所属する川崎フロンターレのお知らせを見ると、2/17(金)の川崎フロンターレvs横浜Fマリノスの開幕戦のチケットは、一般販売日当日中に完売したことがわかります。
ライブ・エンターテイメント(音楽コンサートやステージでのパフォーマンスイベント)業界も、2023年にコロナ前の市場規模に戻ると言われています。2022年6月15日にぴあ総研は、2021年のライブ・エンターテイメント市場規模は3,072億円で、これはコロナ禍前2019年に比べ、51.2%であることを発表しました。しかし、2020年の1,106億円に比べると約3倍の規模に、特に市場規模がコロナ禍前に比べ2%まで縮小するほどの大ダメージを受けていた音楽ポップフェス市場が6.9億円から49億円まで約7倍の規模へ回復しており、2022年上半期の市場規模も同様の回復ペースを歩んでいるため、2023年にはライブ・エンターテイメントの市場規模は元通りになると推定されるとのことです。
大衆向けのイベントに関しては、売上という点ではまだ戻っていないというのが現状です。例えば、よく入場前の長蛇の列がニュースに取り上げられるコミックマーケットですが、コロナ禍直前の第98回はフリー入場制だったため、1日20万人弱の入場がありました。しかし新型コロナウイルスの感染拡大後は、チケット制を導入し来場客の上限が設定されたことで、1日辺りの来場者数は5万5千人(99回)→8万5千人(100回)→9万人(101回)と段階を踏んで規模を大きくしており、今年8月開催予定の第102回は約12万6千人と、コロナ禍前の規模には戻っていない状態です。フリー入場制は、チケット制と違い混雑具合の想定が難しく、感染拡大防止の面でもチケット制による人数管理が必要だったのでしょう。来場者数が同人誌の売上に直結するということもあり、売上の回復にもまだ時間がかかりそうです。
地域の観光資源である夏の祭も、2022年に3年ぶりの開催が多くありましたが、新型コロナウイルスが流行しているタイミングでもあったため、コロナ禍前に比べ観光客は大きく落ち込みました。例えば青森ねぶた祭実行委員会は、祭り期間中の人出が105万人と発表しましたが、それは前回2019年の285万人から約6割減の数値でした。
とはいえイベントの数という点では、かなり回復したと思われます。例えば、毎年東京ドームで年始に開催されていた「ふるさと祭り東京」は、感染拡大直前の2020年1月より今年3年ぶりに開催されました。また、世田谷区の冬の風物詩であるボロ市も昨年末に3年ぶりに開催されています。双方に参加したのですが、たくさんの人が来場しており、イベントの活気が戻って来ていることに高揚感を覚えました。
日本最大級の日本酒イベント「CRAFT SAKE WEEK」や動画クリエイターの祭典「U-FES」なども、今年3年振りに開催されます。上述の地域の祭りに関しても、2022年にたくさんの祭りが3年ぶりに開催されており、埼玉県の大野元裕知事は、2022年の「埼玉県10大ニュース」の1位に「3年ぶり県内祭・イベント開催」を挙げたほどでした。
このように、イベントの市場規模・売上に関しては、まだコロナ禍前に戻っているとは言えません。しかし、スポーツの観戦環境はほぼコロナ禍前と同じ状態にまで戻っており、ライブ・エンターテイメントも屋内外共に今年中には市場規模がコロナ禍前までの規模まで回復すると言われるなど、両者は2023年に市場規模が戻ると思われます。また、イベント関係に関しては、現在のようなフリー入場制だったものがチケット入場制になっている限り、来場者数を増やすことが開催期間を延ばさない限り難しく、市場規模の回復にも関わってきそうです。ただ、今回感染法上の分類が「5類」に変わることで取り扱いが季節性インフルエンザと同等になるため、開催形態が戻れば、すぐにでも市場規模や売上は戻っていくでしょう。イベントの活気は、人間の生きる力を感じるので、2023年は1つでも多くのイベントがコロナ禍前と同じ、もしくはそれ以上のイベントになることを願います。