近年オリンピックで採用が増えるアーバンスポーツの魅力とは

 2023年になり、気付けば2024年のパリオリンピックが来年まで近づいて参りました。東京オリンピックでは、空手、スケートボード、スポーツクライミング、サーフィンの4種目が新競技として採用されましたが、パリオリンピックでは何が新競技として採用されるかご存知ですか?

 その競技は、ブレイキンです。ブレイキンとは、ブレイクダンスのことで、DJがかける音楽に合わせて2人のダンサーが互いの技術を競い合うスポーツです。選手はDJが流す音楽を事前に知ることができず、流れる音楽に合わせて即興でダンスを披露します。

 元々は1970年代のニューヨークにて、ギャングの抗争が続いていたところ、これ以上暴力による被害を出さないために、ダンスで勝敗をつけるようになったのがブレイキンの起源と言われています。ブレイキンが世界中に広まった今は、若者を中心に絶大な人気を誇っており、その人気が評価され、パリオリンピックでは新競技として採用されました。

2024年のパリオリンピックで種目に採用されたブレイキン
自分らしさを表現し、それを互いに認め合うアーバンスポーツ

 東京オリンピック以降新しく採用されたスポーツに共通して言えることは、若者に人気なアーバンスポーツが増えているということです。オリンピックは勝敗を争うものになりますが、アーバンスポーツは本来公園などの日常の遊びに溶け込み、1人1人が自分らしさを表現するスポーツです。自分らしさを表現し、それをお互いに認め合う「多様性」と、何度も失敗を重ねながら上達する成功体験による「自己肯定感」の育みが、今の若者の人気に繋がっているのかもしれません。

 今回オリンピックの種目に採用されたブレイキンもアーバンスポーツの1つです。アクロバティックなダンスのイメージが強いブレイキンですが、今回ブレイキンで注目した特徴に、「誰もがオリジナルの技を持っている」という点があります。ブレイキンは、決まった型などがあるわけではなく、その場の音楽に合わせて即興でダンスを披露し合うスポーツなので、ダンスに正解はなく、自分のありのままのダンスを披露します。そのお互いの「個性」を認め合ってダンスバトルを行うところに、昨今注目されているSDGsの精神や多様性といった側面が見受けられます

ブレイキンの特別授業が自己肯定感を高める

 「個性を認め合う」ことは、自己肯定感を高めることに繋がります。東京都葛飾区にある新小岩中学校では、ブレイキンの特別授業が行われました。

 JDSF(日本ダンススポーツ連盟)とNHKが協力し、昨年の11月から3か月間、毎月1回プロのブレイカー(※ブレイキンを踊る人の総称)が生徒にブレイキンを指導し、最後の授業では授業参観によるダンスの発表が行われました。担当された千葉先生は、東京都でも数が少ないダンス経験のある体育教師で、実際学生時代にブレイキンをされていたということもあり、新小岩中学校にこの取組みの打診があったとのことです。学校側も、ブレイキンを通じた生徒の体力向上や体幹の強化、また壁を超える成功体験を通じた達成感を生徒に味わってもらえたらとこの取組みに参加しました。

 ブレイキンのアクロバティックで難しいイメージもあり、最初は「できるかわからない」、「人前で踊るのが恥ずかしい」など不安がっていた生徒たちですが、千葉先生からの「ブレイキンにおいて、うまく踊れないことは間違いではない。ブレイキンは個性を認め合うダンス。不器用でも全力でやって、楽しんで自分を表現しよう」といったアドバイスもあり、最後は授業にポジティブに参加し、発表でも素敵なダンスを披露したとのことです。この取組みを通じて、たくさんの生徒にとって、ブレイキンは自己肯定感を高めるきっかけになったのではと思います。

 内閣府が令和元年6月に発表した「我が国と諸外国の若者の意識に関する調査」によると、自己肯定感を問う「私は、自分自身に満足している」という問いに「そう思う」、「どちらかといえばそう思う」と回答したのはわずか45.1%と半数にも達していません。日本人は、自己主張を控え、協調性を身に付けるような教育が行われていることが、自己肯定感の低い原因の1つだと言われています。自己主張が弱いことが悪いことだとは思いません。しかし、自己肯定感の向上は、精神の安定に繋がり、個性を認め合う余裕を生みます。これから求められる多様性が尊重される世界において、ブレイキンを始めとしたアーバンスポーツは重要な役割を果たしていくかもしれません。アーバンスポーツは公園などで気軽に始めることができますので、この機会に始めてみてはいかがでしょうか。

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